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個別記事: 2014年04月08日

PM2.5対策と尼崎道路公害訴訟の成果・終結

 最近、中国大陸からの黄砂を含む大気汚染物質、とりわけPM2.5の来襲が問題になっています。中国本土でも深刻な大気汚染対策として、日本製のPM2.5の除去機能を備えた空気清浄機がよく売れているということです。

 かくゆう私も、喘息気味のうえ花粉症にもなったことから、10年近く前からPM2.5はもとより花粉・ダニ対策を兼ねた脱臭空気清浄機を使っています。

 

 最近のマスコミでは余り触れられていませんが、我が国で最初に浮遊粒子状物質(SPM)のPM2.5による汚染が大々的に社会問題化したのは、私たちが弁護団の一員として担当した国と阪神高速道路公団を被告とする神戸地裁の「尼崎道路公害訴訟」において、我が国初の「公害道路通行差止判決」を勝ち取ったことからでした。PM2.5というのは、大気中の浮遊粒子状物質のうち、2.5マイクロメートル(μm=1000分の1mm)以下の物質をいいます。人体に侵入して肺や血管を汚染します。

   あの石原慎太郎元東京都知事(裁判中は担当の建設省(現国土交通省)大臣だったこともあります)ですら、この判決を根拠に東京山手線内から大型車(PM2.5の排出源)を事実上締め出そうとしたほどでした。

 

 2000年1月31日に言い渡された神戸地裁の差し止め判決は、

 国道43号線と阪神高速3号神戸線について、「1時間値の1日平均値0.15㎎/を超える「浮遊粒子状物質」(SPM)による大気汚染を形成する自動車走行への各道路の供用を禁止する」

という内容でした。

 その理由は、自動車排出有毒ガスと原告らの気管支喘息又は喘息性気管支炎の発症ないし増悪の医学的科学的因果関係を認めたもので、

その排出差止基準は、

 ①我が国における当時の最新の疫学的知見である「千葉県が千葉大学医学部に委託して行った道路沿道被害調査(千葉大調査)の結果」、

 ②アメリカにおける化石燃料由来の微小粒子(PM2.5)に関する疫学的知見とそれに基づく大気質基準の提案、

 ③国立環境研究所嵯峨井勝博士らによるディーゼル排気微粒子(DEP)に関する実験的知見

など、国・公団も否定できない数々の事実を主な根拠とするものでした。この判決は、広く海外にも報道されています。

 

 大阪高裁でも一審判決は事実上支持され、裁判所は一回の公判だけで結審し、国と公団に対して原告団との和解を強く促しました。20世紀に起こった社会問題は20世紀中に解決すべきだという強い姿勢でした。

 その結果、一審判決を実質的に実現するために原告患者会との協議を踏まえた種々の道路交通規制を行う内容の「歴史的和解」が成立しました。

 

 その後、原告団と国・公団の間で、昨年まで毎年計47回も「尼崎市南部地域道路沿道環境改善に関する連絡会」が開催されてきましたが、大型車の通行量がほぼ目標を達成しつつあること、原告団もその半数以上が既に死去しており残った原告も高齢化のため活動ができなくなってきたこと、最近のPM2.5問題で自動車排ガス規制を中心とする大気汚染抑制対策の重要性が広く世界的にも認知されてきたことなどから、昨年、連絡会を通した国・公団との交渉を終結したのでした。

 

 思えば、一審裁判継続中の1990年代後半には、中国からも大学研究者や弁護士団が原告弁護団のところに調査見学に来たこともあったのに、今の中国本土各地のあのひどい大気汚染の現状はどうしたことかという疑問もあります。

 ともかく、地道な住民運動が裁判を通してやがて社会を変革し、世界を動かしていくことがあるという一例です。

 

 最後に蛇足ながら、空気清浄機には、JIS規格及び日本電気工業会規格 に合ったHEPAフィルター(高性能エアフィルター)を備えているものを最低限の基準としてお勧めします。その正規品ならば、PM2.5よりもさらに微少なPM0.3までのチリやホコリを集塵することになっています。

 

                                                                                              弁護士 山 内 康 雄

 

投稿日: 2014年04月08日
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